ゲコデスノート

酒の飲みの備忘録

Ballantine’s 12年 60年代流通 赤青旗12年を追う

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Ballantine’s 12年 60年代流通
評価(10段階):7

オールドボトル特有の埃っぽい香りたち、アプリコットジャム、カラメル、生クリームをたっぷりとのせた紅茶のシフォンケーキ、中盤にフランスパンのコゲたような苦味、みかんゼリーに沈むみかん、遠くで炊かれている野焼きのようなスモーキーが漂う

複雑な香味の中で様々な表情を見せてくれるも、バランス良くまとまり、厚みもしっかりあるハイレベルなブレンデッドウイスキーです。


ハイランクなブレンデッドウイスキーとして、多くの人に認知されているバランタインウイスキー。今回は、1960〜70年代に流通していたとされている、通称「赤青旗」の12年ものに焦点を絞り、まとめていきたいと思います。


まず、12年が登場するまでの、バランタインの歴史に少し触れていきましょう。
1827年、ジョージ・バランタイン営む、エジンバラの食料品店にて、バランタインの名前を付けたウイスキーの販売を始めます。1867年にブレンデッドウイスキーの製作、販売を始め、人気を集めたバランタインは、当時貿易や造船で栄えていた港湾都市グラスゴーに拠点を移します。

長男が店を継ぎ、ジョージ・バランタインが亡くなった4年後の1895年、バランタインウイスキーヴィクトリア女王により、王室御用達を授けられることになります。

1919年、国外にも市場を広げていたbig5(デュワーズ、JW、ホワイトホース 、ヘイグ、ブキャナン)に遅れをとっていたバランタインは、ブランドをバークレー&マッキンレー社に売却することを決意。
その下で成長したバランタインブランドは、1935年に当時カナダで最大のウイスキーメーカーであったハイラム・ウォーカー社の手に渡ります。

ハイラム・ウォーカー社は、現在も魔法の7柱の名前で知られる、バランタインのキーモルトを製造する蒸留所を傘下に収めていき、1930年代にバランタイン30年を、50年代にはバランタイン17年をリリース。
また1938年、ダンバートンの造船所跡地に、グレーンウイスキーの製造、貯蔵、ブレンド、ボトリングの全てを行う工場、ダンバートン・グレーン蒸留所を建設します。
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(スコッチウイスキーの歴史より掲載 今はなきダンバートン蒸留所)

そして、1959年バランタイン12年の製造、販売がスタート!


少し触れて、と書いたものの、バランタイン12年の登場から、100年以上もの時を遡ってしまいました。
今回、ブログ冒頭で紹介したボトルは1960年代流通、バランタイン12年最初期のボトルになります。

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年代の見分け方は多くのブロガー様がまとめているので、簡単に。以下については、バランタインの他のライナップの年代見分けとも共通している部分です。

●1960年代流通(画像左)
紋章の旗の色が赤青、FOR OVER 135YEARS表記、裏にエンボス加工あり

●1970年代流通(画像中央)
紋章の旗の色が赤青、FOR OVER 145YEARS表記、裏にエンボス加工なし

●1980年代前半流通(画像右)
紋章の旗の色が青黄、ネック周りのロゴが瓶に並行

●1980年代後半以降流通
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紋章の旗の色が青黄、ネック周りのロゴが斜め

といった具合です。
が!しかし、バランタイン12年に関しては例外があるようです。
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(1枚目は世界の銘酒事典1980年版、2枚目は82、3年版)
他のラインはセオリーに沿ってラベルチェンジが行われている中、12年もののみ赤青旗の旧ラベルが使用されています。よくよく拡大してみるとFOR OVER 145YEARS表記もあるような。もちろん、世界の銘酒辞典の誤った掲載という可能性もあります。
ただ、そうとも言い切れないので考察していきたいと思います。


ハイラム・ウォーカー社は1977年に、ダンバートンから離れた地、キルマリッドにブレンデッド施設を新規に建設。1982年、同地に当時ヨーロッパで最先端の技術を用いた瓶詰め工場も増設します。
同社が買収され、バランタインブランドがアライド・ディスティラーズ社の手に渡ってから、ペルノ社に買収されるまでの約20年の間に、魔法の7柱のうち4つの蒸留所を売却、2002年にはダンバートン蒸留所は完全閉鎖、解体されます。

ダンバートンから、キルマリッドへ、瓶詰め業務を移転していた時期、同じバランタイン12年でも赤青旗と青黄旗のラベルの2種類が流通していたのでは、と。
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また、バランタイン17年にも流通時期不明の赤青旗、角瓶ボトル(画像左 王田珈琲専門店さまにて)が存在します。ボトルチェンジをしていた訳ではなく、角瓶ボトルと並行して、グリーンのトールボトルも売られていました。味わいとしては、60年代バランタイン12年の純粋な上位互換といった印象で、同時期と見られるグリーンボトル17とは少し毛色が違うように思いました。

1982年前後、
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ダンバートン蒸留工場にて、ブレンド、瓶詰めを行われていたのが、赤青旗12年、赤青旗角瓶17年。

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キルマリッド工場にて、ブレンド、瓶詰めを行われていたのがそれ以外のバランタイン青黄色旗ラベルだったのではないでしょうか。


赤青旗ラベル、角瓶17年の流通時期について、はてな?と思う機会が多く、今回それなりにまとめてみました。

魅力的なブレンデッドウイスキーバランタイン。私も大大大好きです。50年以上も前のバランタインを、現行のものと並べて飲み比べできる時代に産み落としてくれた両親に感謝したいレベルです。
将来富豪になったら、バランタイン30年のハイボールを食中酒として、ガブガブ飲みたいですね。


長々とお付き合い頂き有難うございました!



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