ゲコデスノート

酒の飲みの備忘録

【前編】Johnnie Walker Red label 1960年代から現代までに浸る

前回の更新から、一ヶ月近く経ってしまいました。お久しぶりです、ゲコです。

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世界で最も飲まれていたブレンデッドウイスキージョニー・ウォーカー」のスタンダード品「レッドラベル」
今回は、年代によって異なった個性を持つ、通称ジョニ赤を、1960年代から現在にかけての計5本の年代別テイスティングノートを軸に、ボトル年代判別や、歴史について触れていきます。

是非、お手元にあるジョニー・ウォーカーをグラスに注いで、本記事を酔いのお供に楽しんで頂ければ
と思います。


酒飲みでなくとも一度はその名前を聞いたことがあるであろう「ジョニー・ウォーカー
主な原酒はモートラック、カーデュ。ハイランドを中心に、約40種のモルトとグレーンをブレンドしています。

はじめに、1960年までのジョニー・ウォーカーの歴史をさくっと見ていきましょう。


1820年キルマーノックの地に創業された「ジョン・ウォーカー & サンズ社」当時は小さな食料雑貨店でした。
1830年頃よりウイスキーの製造を始め「オールドハイランド」の名で販売していましたが、1909年に、創業者ジョンの愛称に因んだ「ジョニー・ウォーカー」へと名前を変更。
スタンダード品を「ホワイトラベル」、スペシャル表記を「レッドラベル」、エクストラ表記のハイランク品を「ブラックラベル」とラベルカラーに合わせて名付けをします。

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また、ジョニー・ウォーカーのシンボルでもある紳士のイラスト「striding man」(直訳すると大股で歩く男)を、漫画家トム・ブラウンが描いたのはこの前年の1908年。
現在でもジョニー・ウォーカーの名前の元で、この紳士は広く認知されていますね。

1925年にDCL (ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド)の傘下に。
当時アメリカは禁酒法の真っ只中。体力のなくなっていた会社をDCLは積極的に吸収していました。

冬の時代を生き延びたジョニー・ウォーカーは、1935年に王室御用達を授かり、1950年代には世界で最も売れているウイスキーになります。

1960年代

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Johnny Walker read label 60年代流通
評価(10段階):7

柔らかい香りたち、ベビーパウダーをはたいた赤子の肌、ドライプルーン、熟れすぎたスモモ、洋酒に浸したドライフルーツのパウンドケーキ、ねっとりと甘い干し柿、抹茶、煎ったマスタードシードのようなピートが味にメリハリをつけている


文句なしのオールドブレンデッド。当時の原酒の素晴らしさが伝わってくる銘品です。
個人的にシガーに合わせて楽しむのも◎


第二次世界大戦後、連合国の占領下にあった日本は1952年に独立を回復しますが、沖縄は1972年までアメリカの占領下にありました。
このボトルはその当時、アメリカ国沖縄に輸入された一本。

国内で、1962年の酒税法改正により酒類の分類が変わり、特級ウイスキーのシールがぺたぺたと貼られ始める前後ですね。


ボトルデザインを見ていきましょう。

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こちらのボトルは背面にエンボス加工が施されています。ただ、当時日本国内で流通していたジョニ赤にはエンボス加工は見られません。
アメリカ流通品ならではのようです。


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1960年代後半になると画像右の針金付きのコルクに。


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1950年代のジョニ赤もコルクキャップですが、斜めに貼られたラベルの横に紋章が描かれています。


同時期流通と思われるボトルでも、デザインが異なる物が多く見られます。

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日本の正規輸入はないようですが、ティンキャップで、デカデカと紳士のイラストが貼られたボトルも。
下部ラベルや、海外サイトの情報から探るに、1940年代前半の一時期のボトルのよう。

1950、60年代は、キャップの形状、ラベル、エンボス加工など、様々な違いが見られます。1箇所のみに着目すると年代判別の確度が低いため、国内流通品なら等級表記もあわせて、総合的に推測していくのが好ましいと思います。

1970年代

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Johnny Walker read label 70年代流通
評価(10段階):6+

埃っぽさが鼻をくすぐる、ドライアプリコット、シナモンシュガーを振ったバナナケーキ、麹のような柔らかい甘さ、糖度の低いリンゴ、キャラメルラテのようなビターな余韻、乾いたピート


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コルクキャップからスクリューキャップに変わります。容量が760mlでスクリューキャップなら、ほぼ1970年代でしょう。

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1960年代のボトルと並べると紳士の顔が端正に!
は置いておくとして、ボディは少し軽くなります。
また、比較するとピートのニュアンスが少し尖り、良くない意味で目立っているように思います。
もちろん、比較するとであって、芳香も味わいも衰えておらず、十二分に美味しいです!
ハイボールにすると伸びが良く、四季問わず楽しめます。


この頃、スコットランド国内のウイスキー生産量は高く、1974年のピーク時には1961年の倍近い量のウイスキーが生産されていました。ウイスキーの人気が伺えますね。

日本国内では、洋酒の輸入に大きな動きがあります。
1971年、ウイスキーの貿易、全酒類の輸入が自由化されます。それに伴い、正規代理店による輸入だけではなく、並行輸入というルートも生まれることになります。

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ジョニー・ウォーカーの正規代理店は「コールドベック株式会社」正式名称は「コールドベック・マクレガー」
1970年代中期よりボトル背面のラベルに名前が登場します。

同社はワインやスピリッツの流通会社で、以前から、ジョニー・ウォーカーと輸入業社(三菱、資生堂、東洋綿花)との橋渡しを行なっていました。
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(1970年に東洋綿花からトーメンに社名変更)


同社は1987年まで、ジョニー・ウォーカーの宣伝、流通に尽力しました。


思いの外長くなってしまったので一度〆ます。
後編では、スコッチウイスキー不況の時代である1980年代から現在までの3本をテイスティング。前編と同じように歴史や主観も添えてお送りします。

後編もお付き合い頂けたら嬉しいです。
▶︎【後編】

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