ゲコデスノート

酒の飲みの備忘録

マクダフ蒸留所モルト「GLEN DEVERON」 私的備忘録

「グレンデヴェロン」と聞いてサッと蒸留所名が出てこない、ゲコです。
あ〜マクダフ蒸留所のモルトウイスキーか〜、と何度もGoogleのお世話になり。はたまたマックリーダフと聞いて、あれ?デヴェロン?(関係ない)と混同したり。
今回は自分のために、マクダフ蒸留所の歴史、グレンデヴェロンのボトルについてを調べました。1990年代と近年流通オフィシャル、ボトラーテイスティングノートと私感も添えて。


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1962年、マクダフ蒸留所はグラスゴーの仲買業者数名の手によって建てられます。
設立には、当時「タリバーディン蒸留所」「ディーンストン蒸留所」を所有していた「ヘップバーン社」も深く関わっていました。
念のため注意しておくと、「ヘップバーンロス社」ではなく「ブロディヘップバーン」の方。


スコットランド国内の蒸留所経営権が大きく代わる1970年代。
1972年、マクダフ蒸留所は、創業より一貫してライトタイプのウイスキーを作り続けている「ウィリアムローソン社」に買収され、ブレンデッドウイスキー「ウィリアムローソン」の原酒として使われるようになります。

少し話はそれます。同年、ヘップバーン社は所有していた2つの蒸留所、ブレンデッドブランド「グレンフォイ」を「インバーゴードン社」に売却。その後のヘップバーン社の情報は探しても見つからず、この年に解体されてしまったようです。


ウィリアムローソン社の元で、1970年代後半にマクダフ蒸留所は初めてのシングルモルト「グレンデヴェロン」を発売します。

「デヴェロン」とは、バンフとマクダフの間を流れる川の名前。仕込み水も、デヴェロン川支流から水を引いています。
そして、当時のスコッチ業界において重大なマーケットであったアメリカや、ヨーロッパ諸国では「グレン」を冠したウイスキーが人気があったことから、あわせて「グレンデヴェロン」と名付けられました。

このグレンデヴェロンという名前ですが、マクダフ蒸留所建設の際、所有グループを法人化した際から会社名に使われていたようです。ウィリアムローソン社の手に渡る前から、国外のマーケットを意識していたことがわかりますね。

また、「マクダフ」という名称が使われなかった理由として、DCL(ディアジオの前身)が先んじて商標登録していたため、という話もあります。情報源が不明のため、一行だけで。


発売当初のラインナップは5年もの、8年もの、12年ものの3種ですが、発売当初に日本に入ってきていたものは8年と12年もののみでした。
輸入業者は「バークレイ社」。同名のブレンデッドウイスキーを出しており、流通だけではなく手広く事業を展開していた会社のようです。

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ボトルはブレンデッドウイスキー「ウィリアムローソン」と同じ形、80年過ぎるとトールボトルに切り替わります。

国内外でグレンデヴェロンが緩やかに認知され始めた頃。
1980年、イタリアの一大洋酒グループである「マティーニ・エ・ロッシ」に「ウィリアムローソン社」は吸収され、マティーニ・エ・ロッシ内のウイスキー部門を担うことになります。


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GLEN DEVERON18年 1990年代前半流通
評価(10段階):なし
(まさかのテイスティングノートを紛失(!)うろ覚えで書いてます)
焼きみかん、柔らかい麦感、ナッテイなこく、僅かに柔らかいピートスモーク

全体的に柔らかく滑らか。なにか際立った特徴があるわけではありませんが、優しい口当たりと確かな旨味、美味しいウイスキーだった記憶があります。記録はありません。猛省。


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1980年代後半から、輸入業者が「日欧商事」に変わります。
また、この時期に入ってきていたのは年数表記のないものと12年もののみ。8年の年数表記がなくなったものと思われます。

1993年、ウィリアムローソン社の親会社「マティーニ・エ・ロッシ社」は「バカルディ社」と合併。その5年後、バカルディ社は「デュワーズ社」を買収。
マクダフ蒸留所の所有権はデュワーズ社へ移り、現在でも同社の下で稼働しています。

日本への正規輸入はその後、1990年中頃からなくなってしまいます。

余談ですが、同年「マクダフ・インターナショナル」というアイラミストなどのブレンデッドウイスキーを手がける、ブレンド&ボトラー会社が設立されますが、マクダフ蒸留所との関係はありません。


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2000年前半までボトルのラベルは菱形に、その後高級感ある(?)パッケージに。


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GLEN DEVERON 16年 現行少し前
評価(10段階):4
熟成感からくる濃い甘さと植物的な酸がたつ、わらび餅、生姜、古くなったおから、ワックスをかけたオレンジの皮、口当たりは優しく、甘みのないりんご、ジンジャーシロップ、生のじゃがいも、炒り豆のような麦の香ばしさが口内を満たす

ボディが軽く、全体的に浮ついた印象があります。ただ、だからこそ細かい香味は拾い易く、独特な甘いアロマがクセになる方もいらっしゃるかと思います。


また、ボトラーズでは、蒸留所名であるマクダフと記載されています。
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Macduff 1997-2018
評価(10段階):6
わかりやすい熟成感、革製品、ブラッドオレンジ、ジンジャー、木屑、やや粉っぽい、アメリカンチェリー、しっとりとした口当たり、100%オレンジジュース、レモンピール、トーストしたイギリス食パン、日本酒のような乳酸感、薄めたミルクココア

ジューシーなフルーツと香ばしい樽香。キャッチーで、人を選ばない美味しいモルトウイスキーでした。


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そして現在、グレンデヴェロンは「ザ・デヴェロン」と名前とパッケージを変え、現在では日本にも 年間数量限定品として、12年ものが正規で入ってきています。
フロストボトルがおしゃれですね〜。

(どこかで飲んだら追記します)

その柔らかい味わいが、現在様々な国で評価を得ているマクダフ蒸留所のモルトウイスキー、デヴェロン。また、そのモルトを使用したブレンデッドウイスキー、ウィリアムローソンの人気は飛ぶ鳥を落とす勢いだとか。(ややオーバー表現?今度まとめます)
今後も目が離せませんね!


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Munro’s King of Kings 80年代流通 コルクを砕いていく

どうもゲコデス。簡易更新にてお送りします。
今回は「Munro’s King of Kings」をゲコ式で開けていくだけです。コルクがボロボロに崩れてボトルの中に落ちてしまい悲しい思いをした方も多いのでは?
以前に抜栓に失敗された方、開け方がわからず棚の隅に眠らせている方、参考にして頂けたらと思います。


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Munro’s King of Kings 80年代流通
評価(10段階):6
甘く濃厚な香りたち、カラメル、りんご飴、土くさいピートが鼻をくすぐる、麦芽、しっとりとした口当たり、巨峰、焦がしたパウンドケーキ、オレンジピールベビーチーズ、ボディはどっしりと厚く呑みごたえがある


キーモルトは「グレンダラン」「クラガンモア」と聞くとピンとくる方も多いと思います。
「ジェイムズ マンロー&サンズ」は「オールドパー」や「サンディマクドナルド」を販売する会社「マクドナルドグリンリース社」の子会社。そのため原酒はほとんどオールドパーと同じものが使われています。また、このボトルは日本向けに多く詰められており、明治初期には国内に輸入されていたとか。

「王の中の王」なかなか強気な名前ですが、その濃厚な芳香と味わいは名前に遜色ありません。

オールドボトルの中でも相当なリスキーボトルとして知られるオールドパーと比べると、状態が安定しているものが多いマンローズ。ただし、あくま比較してというだけで、ガラス瓶と比べて陶器瓶はアルコールが抜けやすい上に、肝心の液体は目視での確認ができません。しかもコルクは非常に脆く、崩れやすい。リスキーであることに変わりありません。
見た目やグラム数で選りすぐっても、肝心の中身には覇気が無いなんてこともザラで。ギャンブルボトル、やめたいですね。


それでは、できるだけ綺麗に抜栓する方法を写真つきで紹介していきます。

用意するのはコルク抜きと慎重さ。


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まずは上についてるロウを、紐を引っ張り剥がします。


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ロウのカスやコルク片が、コルクの上に溜まっているのを綺麗に掃除、中に落ちるのを防ぎます。


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指でコルクを優しく押しこんでいきます。瓶と固着している際を均等に円を描く様に、優しく、少しずつ。決して無理やり押し込まない。少しずつ、コルクの固着をゆっくりと解いていきます。
この際空気が抜けるような音がしたら止まるまで中断しましょう。この際押し込むと気圧の関係でコルクが中に吸い込まれてしまう可能性があります。


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少しコルクが沈んでいますね。


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コルクが少し動いたかな?というところでボトルを逆さにしてコルクを液体に湿らせます。この時に液体がコルクに染みてきていたらほぼ勝ち確定です。


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あとはコルク抜きを中心にゆっくり差し込み(この際も決して押し込まない)、慎重に引き上げる。
(コルク抜き、ズレた……やばい……)


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慎重に、慎重に。ほぼぬけてきました。
(やっぱりコルク抜きが端に……)


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ああああ、やりました。やらかしました。半分だけヘリにコルクがくっついたまま残ってしまいました。


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無事箸で残りのコルクも救出。実質成功ということで、許してください……。


1.コルクを押し込み固着を解すこと。
2.潤滑油の代わりにしっかりと液体をコルクに浸ませること。
3.コルク抜きをきちんとと真ん中に、優しく挿すこと。
4.焦らず、ゆっくり、引き上げる事。

上記を抑えたらほぼ確実に抜栓することができるかと思います。


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成功例はこちら。コルク抜きを真ん中に挿すの、大事ですね。

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付属のコルクは脆いので、ワインコルクなどを挿すのがいいかと思います。


気を取り直して、今回の開けた個体をテイスティング
甘い香りたち、カラメル、薄いスモーク、口に含むと緩く、中盤からパフュームが……。

抜けとパフューム、美味しくないとは言わないけれど、状態はイマイチ。グレンダランの魅力的な土くさいピートも存在感が薄く、飲みごたえもなし。
悲しいかな。無事開栓はできましたが、勝利の美酒とはいきませんでした。


しかも、パフューム。ねえ、パフュームはどこからくるの?
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今回は「Munro’s King of Kings」を空けてみました。是非本記事を参考にしてコルクを綺麗に抜き喜び、中の液体の現実を知り悲しんでください。



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【後編】Johnnie Walker Red label 1960年代から現代までに浸る

『Johnnie Walker Red label 1960年代から現代までに浸る』後編になります。未読でしたら、前編からご覧下さい。
▶︎【前編】


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文字を続ける前に、まずは乾杯。今宵はハイボールで。
世界を股にかける愛すべき伊達男に、もう少しだけ想いを馳せていきます。

1980年代

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Johnny Walker read label 80年代後期流通
評価(10段階):5

生暖かい香りたち、ゆるいカラメル、砂埃のようなピート、生焼けのパンケーキ、僅かに魚醤の癖、駄菓子の杏、すり潰した苦ヨモギ、テーブルコショー、余韻は短く短調


ちょっと(結構)珍しいレバノン廻りの並行輸入品です。
前編で紹介した二本より、ストレートで飲むとマイナス面が目立ちます。ただ、ハイボールにするとストレートで飲んだ時に気になるクセがマスクされ、十分に楽しめます。

ボトルの背面も見ていきましょう。
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1枚目写真左の空瓶は同時期の正規輸入品。
輸入業者はコールドベックのままですが、その後ごく短い一時期のみコールドベック・ドッドウェルに変わります。


需要減少、不況により、スコットランドの多くの蒸留所が休止、閉鎖され、ウイスキーの生産量も著しく低下し、蒸留所の経営権も目まぐるしく変わる1980年代。
1970年代末から続いたECとの貿易摩擦により、DCLはジョニー・ウォーカー及び他81ものブランドの、イギリス国内での流通、ヨーロッパ諸外国への輸出を中止。ふさわしくない関税を被り高額になることをきらった、ブランドを守るための決定です。


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この頃、イギリス国内ではレッドラベルの代替品として「ジョンバー」が姉妹会社より売られることになります。


そして1986年、哀くも変化に適応できなかったジョニー・ウォーカーの親会社DCLは、アイルランドのギネス社に吸収されます。
109年間スコッチウイスキー業界を支えてきたDCLの長い歴史は幕を下ろします。

翌年、ギネス社のウイスキー部門といえるUD(ユナイテッド・ディスティラーズ)が発足。
その元で、ジョニー・ウォーカーは「ブルーラベル」の前身である「オールデスト」をリリースします。


日本では、円高、イギリスのEU内での貿易摩擦も影響してか?、多くのスコッチウイスキーが入ってきていました。
需要が伸びて来ていたとはいえ、まだまだスコッチウイスキー知名度は低く、様々なノベルティがボトルに付けられたのもこの時代。

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灰皿や水差し、はたまたヌードカレンダーまで!(欲しい)
企業努力!


1989年酒税法の改正により、ウイスキー級別制度が廃止、ウイスキー特級時代が終わりを迎えます。


1990年代

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Johnny Walker read label 90年代後期流通
評価(10段階):5-

ハリのある香りたち、精製アルコール、穀物酢、塗り立てのアスファルト、スイートコーン、乾燥したほうれん草パン、三温糖、薬のような苦味、舌に粉っぽさが残る


刺激のある香りたちですが、口に含むと印象はかなり緩く。
ソーダで割ると、なんだか昔懐かしいラムネのような甘さが引き立ちます。


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特級表記が消え、輸入社、総代理店の表記がUDになった1990年代初期のボトル。
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表ラベルのデザインは、紳士が小さくなり、上部のラベルが山なりになっていますね。
また、1990年代中頃からバーコードが使われ始めます。


80年代の不況を乗り越え、生産数量、消費量ともに回復していった1990年代。
アランやキニンヴィーなどの蒸留所が新設されたのもこの頃ですね。

ジョニーウォーカーも新しいラベルを3つ展開します。1992年、「オールデスト」を「ブルーラベル」に改名。95年に「ゴールドラベル」(現在ではプラチナ)、97年に「グリーンラベル」をリリース。

その1997年、ギネス社は、J&Bなどのブランドを保有する、「グランドメトロポリタングループ」と合併。
現在でもお馴染み「ディアジオ」が誕生します。


2020年代

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Johnny Walker read label 2020年流通
評価(10段階):4-

刺激的な香りたち、消毒綿、合成木材、給食で食べたワカメのスープ、生の人参、鼻抜けに僅かに蒸しパンの甘味


紳士がついにシルエットになっていますね。
味わいはアルコール感が鼻につき、余韻に妙な不快感があります。

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ただ、コンビニでも買えるこの一本、散歩のお供に瓶から直接きゅっと飲むのには最適です。チェイサーは濃いお茶などが味に締まりを持たせてくれるように思います。

裏面です。
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2009年より麒麟麦酒と業務提携、輸入元が麒麟麦酒になっています。

2012年には新ラベル「ダブルブラック」を、現在では他にも「ワインカスク」や「トリプルグレーン」などの限定品も発売されていますね。


総括

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本年、創業200年を迎えたジョニーウォーカーは、今でも世界で最も売れているスコッチウイスキーブランドとして皆様の側にあります。

正直な感想として、味や香りは50年近く前に流通していたボトルと比べると格段に劣ります。
シングルモルト需要が伸びたこともあり、良質な原酒がブレンデッドウイスキーに回されなくなったのは明らかです。

しかし、200年も前に、遠いキルマーノックの地の食料雑貨店から生まれたウイスキーが、今では全世界で飲まれていて、コンビニでだって手に入る。目覚ましいことだと思います。

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また、2021年にガラス製容器から紙製容器へ変更されることが決まり、賛否を巻き起こしましたね。
紙製容器では長期保存は望めず、骨董品レベルのオールドボトルをちまちまと楽しんでいる私としては寂しく思います。
ただし、企業が環境保全を求められている昨今、全体がリサイクル可能な紙製容器への変更は生態系に配慮した決断で、一概に悪手とは言えません。


時代とともに変化する「ジョニー・ウォーカー
私が老い、亡くなった先も、どんな形になっても、人々に愛され続けていて欲しいと願っています。



それでは、前後編とお付き合い頂きありがとうございました!

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【前編】Johnnie Walker Red label 1960年代から現代までに浸る

前回の更新から、一ヶ月近く経ってしまいました。お久しぶりです、ゲコです。

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世界で最も飲まれていたブレンデッドウイスキージョニー・ウォーカー」のスタンダード品「レッドラベル」
今回は、年代によって異なった個性を持つ、通称ジョニ赤を、1960年代から現在にかけての計5本の年代別テイスティングノートを軸に、ボトル年代判別や、歴史について触れていきます。

是非、お手元にあるジョニー・ウォーカーをグラスに注いで、本記事を酔いのお供に楽しんで頂ければ
と思います。


酒飲みでなくとも一度はその名前を聞いたことがあるであろう「ジョニー・ウォーカー
主な原酒はモートラック、カーデュ。ハイランドを中心に、約40種のモルトとグレーンをブレンドしています。

はじめに、1960年までのジョニー・ウォーカーの歴史をさくっと見ていきましょう。


1820年キルマーノックの地に創業された「ジョン・ウォーカー & サンズ社」当時は小さな食料雑貨店でした。
1830年頃よりウイスキーの製造を始め「オールドハイランド」の名で販売していましたが、1909年に、創業者ジョンの愛称に因んだ「ジョニー・ウォーカー」へと名前を変更。
スタンダード品を「ホワイトラベル」、スペシャル表記を「レッドラベル」、エクストラ表記のハイランク品を「ブラックラベル」とラベルカラーに合わせて名付けをします。

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また、ジョニー・ウォーカーのシンボルでもある紳士のイラスト「striding man」(直訳すると大股で歩く男)を、漫画家トム・ブラウンが描いたのはこの前年の1908年。
現在でもジョニー・ウォーカーの名前の元で、この紳士は広く認知されていますね。

1925年にDCL (ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド)の傘下に。
当時アメリカは禁酒法の真っ只中。体力のなくなっていた会社をDCLは積極的に吸収していました。

冬の時代を生き延びたジョニー・ウォーカーは、1935年に王室御用達を授かり、1950年代には世界で最も売れているウイスキーになります。

1960年代

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Johnny Walker read label 60年代流通
評価(10段階):7

柔らかい香りたち、ベビーパウダーをはたいた赤子の肌、ドライプルーン、熟れすぎたスモモ、洋酒に浸したドライフルーツのパウンドケーキ、ねっとりと甘い干し柿、抹茶、煎ったマスタードシードのようなピートが味にメリハリをつけている


文句なしのオールドブレンデッド。当時の原酒の素晴らしさが伝わってくる銘品です。
個人的にシガーに合わせて楽しむのも◎


第二次世界大戦後、連合国の占領下にあった日本は1952年に独立を回復しますが、沖縄は1972年までアメリカの占領下にありました。
このボトルはその当時、アメリカ国沖縄に輸入された一本。

国内で、1962年の酒税法改正により酒類の分類が変わり、特級ウイスキーのシールがぺたぺたと貼られ始める前後ですね。


ボトルデザインを見ていきましょう。

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こちらのボトルは背面にエンボス加工が施されています。ただ、当時日本国内で流通していたジョニ赤にはエンボス加工は見られません。
アメリカ流通品ならではのようです。


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1960年代後半になると画像右の針金付きのコルクに。


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1950年代のジョニ赤もコルクキャップですが、斜めに貼られたラベルの横に紋章が描かれています。


同時期流通と思われるボトルでも、デザインが異なる物が多く見られます。

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日本の正規輸入はないようですが、ティンキャップで、デカデカと紳士のイラストが貼られたボトルも。
下部ラベルや、海外サイトの情報から探るに、1940年代前半の一時期のボトルのよう。

1950、60年代は、キャップの形状、ラベル、エンボス加工など、様々な違いが見られます。1箇所のみに着目すると年代判別の確度が低いため、国内流通品なら等級表記もあわせて、総合的に推測していくのが好ましいと思います。

1970年代

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Johnny Walker read label 70年代流通
評価(10段階):6+

埃っぽさが鼻をくすぐる、ドライアプリコット、シナモンシュガーを振ったバナナケーキ、麹のような柔らかい甘さ、糖度の低いリンゴ、キャラメルラテのようなビターな余韻、乾いたピート


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コルクキャップからスクリューキャップに変わります。容量が760mlでスクリューキャップなら、ほぼ1970年代でしょう。

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1960年代のボトルと並べると紳士の顔が端正に!
は置いておくとして、ボディは少し軽くなります。
また、比較するとピートのニュアンスが少し尖り、良くない意味で目立っているように思います。
もちろん、比較するとであって、芳香も味わいも衰えておらず、十二分に美味しいです!
ハイボールにすると伸びが良く、四季問わず楽しめます。


この頃、スコットランド国内のウイスキー生産量は高く、1974年のピーク時には1961年の倍近い量のウイスキーが生産されていました。ウイスキーの人気が伺えますね。

日本国内では、洋酒の輸入に大きな動きがあります。
1971年、ウイスキーの貿易、全酒類の輸入が自由化されます。それに伴い、正規代理店による輸入だけではなく、並行輸入というルートも生まれることになります。

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ジョニー・ウォーカーの正規代理店は「コールドベック株式会社」正式名称は「コールドベック・マクレガー」
1970年代中期よりボトル背面のラベルに名前が登場します。

同社はワインやスピリッツの流通会社で、以前から、ジョニー・ウォーカーと輸入業社(三菱、資生堂、東洋綿花)との橋渡しを行なっていました。
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(1970年に東洋綿花からトーメンに社名変更)


同社は1987年まで、ジョニー・ウォーカーの宣伝、流通に尽力しました。


思いの外長くなってしまったので一度〆ます。
後編では、スコッチウイスキー不況の時代である1980年代から現在までの3本をテイスティング。前編と同じように歴史や主観も添えてお送りします。

後編もお付き合い頂けたら嬉しいです。
▶︎【後編】

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ゲコデス(Twitter)

Ballantine’s 12年 60年代流通 赤青旗12年を追う

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Ballantine’s 12年 60年代流通
評価(10段階):7

オールドボトル特有の埃っぽい香りたち、アプリコットジャム、カラメル、生クリームをたっぷりとのせた紅茶のシフォンケーキ、中盤にフランスパンのコゲたような苦味、みかんゼリーに沈むみかん、遠くで炊かれている野焼きのようなスモーキーが漂う

複雑な香味の中で様々な表情を見せてくれるも、バランス良くまとまり、厚みもしっかりあるハイレベルなブレンデッドウイスキーです。


ハイランクなブレンデッドウイスキーとして、多くの人に認知されているバランタインウイスキー。今回は、1960〜70年代に流通していたとされている、通称「赤青旗」の12年ものに焦点を絞り、まとめていきたいと思います。


まず、12年が登場するまでの、バランタインの歴史に少し触れていきましょう。
1827年、ジョージ・バランタイン営む、エジンバラの食料品店にて、バランタインの名前を付けたウイスキーの販売を始めます。1867年にブレンデッドウイスキーの製作、販売を始め、人気を集めたバランタインは、当時貿易や造船で栄えていた港湾都市グラスゴーに拠点を移します。

長男が店を継ぎ、ジョージ・バランタインが亡くなった4年後の1895年、バランタインウイスキーヴィクトリア女王により、王室御用達を授けられることになります。

1919年、国外にも市場を広げていたbig5(デュワーズ、JW、ホワイトホース 、ヘイグ、ブキャナン)に遅れをとっていたバランタインは、ブランドをバークレー&マッキンレー社に売却することを決意。
その下で成長したバランタインブランドは、1935年に当時カナダで最大のウイスキーメーカーであったハイラム・ウォーカー社の手に渡ります。

ハイラム・ウォーカー社は、現在も魔法の7柱の名前で知られる、バランタインのキーモルトを製造する蒸留所を傘下に収めていき、1930年代にバランタイン30年を、50年代にはバランタイン17年をリリース。
また1938年、ダンバートンの造船所跡地に、グレーンウイスキーの製造、貯蔵、ブレンド、ボトリングの全てを行う工場、ダンバートン・グレーン蒸留所を建設します。
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(スコッチウイスキーの歴史より掲載 今はなきダンバートン蒸留所)

そして、1959年バランタイン12年の製造、販売がスタート!


少し触れて、と書いたものの、バランタイン12年の登場から、100年以上もの時を遡ってしまいました。
今回、ブログ冒頭で紹介したボトルは1960年代流通、バランタイン12年最初期のボトルになります。

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年代の見分け方は多くのブロガー様がまとめているので、簡単に。以下については、バランタインの他のライナップの年代見分けとも共通している部分です。

●1960年代流通(画像左)
紋章の旗の色が赤青、FOR OVER 135YEARS表記、裏にエンボス加工あり

●1970年代流通(画像中央)
紋章の旗の色が赤青、FOR OVER 145YEARS表記、裏にエンボス加工なし

●1980年代前半流通(画像右)
紋章の旗の色が青黄、ネック周りのロゴが瓶に並行

●1980年代後半以降流通
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紋章の旗の色が青黄、ネック周りのロゴが斜め

といった具合です。
が!しかし、バランタイン12年に関しては例外があるようです。
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(1枚目は世界の銘酒事典1980年版、2枚目は82、3年版)
他のラインはセオリーに沿ってラベルチェンジが行われている中、12年もののみ赤青旗の旧ラベルが使用されています。よくよく拡大してみるとFOR OVER 145YEARS表記もあるような。もちろん、世界の銘酒辞典の誤った掲載という可能性もあります。
ただ、そうとも言い切れないので考察していきたいと思います。


ハイラム・ウォーカー社は1977年に、ダンバートンから離れた地、キルマリッドにブレンデッド施設を新規に建設。1982年、同地に当時ヨーロッパで最先端の技術を用いた瓶詰め工場も増設します。
同社が買収され、バランタインブランドがアライド・ディスティラーズ社の手に渡ってから、ペルノ社に買収されるまでの約20年の間に、魔法の7柱のうち4つの蒸留所を売却、2002年にはダンバートン蒸留所は完全閉鎖、解体されます。

ダンバートンから、キルマリッドへ、瓶詰め業務を移転していた時期、同じバランタイン12年でも赤青旗と青黄旗のラベルの2種類が流通していたのでは、と。
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また、バランタイン17年にも流通時期不明の赤青旗、角瓶ボトル(画像左 王田珈琲専門店さまにて)が存在します。ボトルチェンジをしていた訳ではなく、角瓶ボトルと並行して、グリーンのトールボトルも売られていました。味わいとしては、60年代バランタイン12年の純粋な上位互換といった印象で、同時期と見られるグリーンボトル17とは少し毛色が違うように思いました。

1982年前後、
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ダンバートン蒸留工場にて、ブレンド、瓶詰めを行われていたのが、赤青旗12年、赤青旗角瓶17年。

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キルマリッド工場にて、ブレンド、瓶詰めを行われていたのがそれ以外のバランタイン青黄色旗ラベルだったのではないでしょうか。


赤青旗ラベル、角瓶17年の流通時期について、はてな?と思う機会が多く、今回それなりにまとめてみました。

魅力的なブレンデッドウイスキーバランタイン。私も大大大好きです。50年以上も前のバランタインを、現行のものと並べて飲み比べできる時代に産み落としてくれた両親に感謝したいレベルです。
将来富豪になったら、バランタイン30年のハイボールを食中酒として、ガブガブ飲みたいですね。


長々とお付き合い頂き有難うございました!



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ABERLOUR 12y V.O.H.M ボトルの変遷

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ABERLOUR 12y  V.O.H.M 80年代流通

評価(10段階) : 7

梅酒に浸った青梅のような甘さと角の取れた酸味、高級なプリンに垂らされる濃厚なカラメル、しっとりとした円やかな口当たり、小粒なベリーをふんだんに乗せたタルトケーキ、コーヒーリキュールのような優しいほろ苦さ 

ブランデーのようなルックスのこのボトル。シェリー樽熟成のオールドモルトとして人気がありますが、しっとりとした麦の厚みも感じられる一本でした。

 

さて、1826年設立の歴史あるアベラワー蒸留所について調べたことを軽くおさらいしていきます。

1945年にキャンベル・ディスティラーズに買収され、同社の子会社であるホワイト・ヘザー・ディスティラーズ社にて詰められていたブレンデッドウイスキー「ホワイトヘザー 」の原酒として使われるようになります。

1975年に、当時シーバスリーガルを所有していた、カナダのシーグラム社に親会社ごと買収されます。後2001年には、ディアジオ社とペルノリカール社がシーグラム社を分割買収。現在はペルノリカール社傘下の蒸留所として、グレンリベットと並んで多くの人に愛されるシングルモルトウイスキーを詰めています。

 

アベラワーは何十年も前からシングルモルトとしてオフィシャルで詰められ、愛飲されてきたウイスキーです。今回は、アベラワーのボトル形状の変遷を、憶測妄想込みで、まとめていきたいと思います。

 

●1970年代中期

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1964ヴィンテージの8年ものが「THE BEST COLLECTION OF MALT SCOTCH WHISKY 」に掲載されていました。私が確認できた最古のオフィシャルボトルです。ボトルの形は70年代流通のホワイトヘザーと同じ形状の角瓶です。最低でも1972年以降の瓶詰めであるのことは確定です。

シーグラム傘下に入り、シングルモルトでも売っていこうや、っていう方針が加わったのではと妄想。角瓶アベラワー8年は1975年からのリリースなのではないでしょうか。

 

 

●1970年後期から1980年代初期

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写真は世界の名酒辞典80年版と83年版より。角瓶アベラワー・グレンリベット8年から少し遅れて角瓶12年、V.O.H.M表記の10年と12年の登場です。V.O.H.Mはvery old hiland maltの頭文字を取ったもの。この表記が大きく書かれたラベル、グリーンのボトル、まるでブランデーのよう。

同時期に角瓶とグリーンボトルの二種類で、熟年数の変わらないものを詰めています。ブランデー需要の高かったフランス向けにはVOHM表記のグリーンボトルを、スコットランド国内とアメリカ向けには角瓶のアベラワー・グレンリベットを、と、輸出先によってデザインを変えていたのかもしれませんね。

 

●1985年頃

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1985年ホワイトヘザーが販売を終了。それに伴い角瓶のアベラワー・グレンリベットも姿を消します。

余談として、VOHMアベラワーは10年と12年の二種類のみですが、角瓶アベラワーはビンテージ表記のあるものや、熟成年数9年なども存在しています。

 

●1980年代中期〜90年代前半

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アベラワー・グレンリベットがスクリューキャップのトール瓶になって登場です。通関コード付き特級シールが貼られているため、86年以前から市場にあったことが分かります。これにより角瓶からトール瓶への切り替わりが1980年代中頃だということがほぼ確定します。

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名酒辞典89年版。VOHM表記はまだまだ健在です。

 

●1990年代前半〜2000年前半

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90年年代前半流通の10年。スクリューキャップからコルクに切り変わります。またキャップ切り替わりからの数年間のみ「HIGHLAND MALT」表記ではなく「PURE HIGHLAND MALT」表記になります。この頃からVOHM表記のグリーンボトルを見かけなくなり、2010年代後半まで写真のようなコルクキャップのトール瓶に詰められています。

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こちらは2000年代前半に免税店向けに出されていたボトル。「SINGLE HIGHLAND MALT」表記に変わっています。その後2010年前後には「HIGHLAND SINGLE MALT」表記に。

 

●2020年現在

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現在はトールボトルから、ダンピーとまではいかないですが、ずんぐりむっくりした可愛らしいボトルに。表記も「SPEYSIDE SINGLE MALT」に変わりました。

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日本では並行輸入品のみのアベラワー10年は未だにトールボトルに詰められており、「HIGHLAND SINGLE MALT」表記のままです。

 

角瓶の9年や、ピュアシングルスペイサイドモルト表記など、わからないボトルが調べれば調べるほど増えてしまったのでこんな所で降参です。

上記内容について、情報が間違っている箇所があるかもしれません。ご指摘ご意見、情報提供など、コメント頂けたら嬉しいです。

 

と、いうことで初めてのブログ記事投稿でした。今回は少しマニアックな内容でしたが、オールドボトルやウイスキーだけではなく、酒呑みとしての記録を気ままにつけてこうと思っています。

ウイスキーを飲み始めてもうすぐ1年、お酒に溺れて早6年。個人的な備忘録ではありますが、覗きに来ていただけたら嬉しいです。

 

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「オールドウイスキー研究日誌」のs.tayamaさんより画像提供して頂きました!↓

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