【後編】Johnnie Walker Red label 1960年代から現代までに浸る
『Johnnie Walker Red label 1960年代から現代までに浸る』後編になります。未読でしたら、前編からご覧下さい。
▶︎【前編】
文字を続ける前に、まずは乾杯。今宵はハイボールで。
世界を股にかける愛すべき伊達男に、もう少しだけ想いを馳せていきます。
1980年代
Johnny Walker read label 80年代後期流通
評価(10段階):5
生暖かい香りたち、ゆるいカラメル、砂埃のようなピート、生焼けのパンケーキ、僅かに魚醤の癖、駄菓子の杏、すり潰した苦ヨモギ、テーブルコショー、余韻は短く短調
ちょっと(結構)珍しいレバノン廻りの並行輸入品です。
前編で紹介した二本より、ストレートで飲むとマイナス面が目立ちます。ただ、ハイボールにするとストレートで飲んだ時に気になるクセがマスクされ、十分に楽しめます。
ボトルの背面も見ていきましょう。
1枚目写真左の空瓶は同時期の正規輸入品。
輸入業者はコールドベックのままですが、その後ごく短い一時期のみコールドベック・ドッドウェルに変わります。
需要減少、不況により、スコットランドの多くの蒸留所が休止、閉鎖され、ウイスキーの生産量も著しく低下し、蒸留所の経営権も目まぐるしく変わる1980年代。
1970年代末から続いたECとの貿易摩擦により、DCLはジョニー・ウォーカー及び他81ものブランドの、イギリス国内での流通、ヨーロッパ諸外国への輸出を中止。ふさわしくない関税を被り高額になることをきらった、ブランドを守るための決定です。
この頃、イギリス国内ではレッドラベルの代替品として「ジョンバー」が姉妹会社より売られることになります。
そして1986年、哀くも変化に適応できなかったジョニー・ウォーカーの親会社DCLは、アイルランドのギネス社に吸収されます。
109年間スコッチウイスキー業界を支えてきたDCLの長い歴史は幕を下ろします。
翌年、ギネス社のウイスキー部門といえるUD(ユナイテッド・ディスティラーズ)が発足。
その元で、ジョニー・ウォーカーは「ブルーラベル」の前身である「オールデスト」をリリースします。
日本では、円高、イギリスのEU内での貿易摩擦も影響してか?、多くのスコッチウイスキーが入ってきていました。
需要が伸びて来ていたとはいえ、まだまだスコッチウイスキーの知名度は低く、様々なノベルティがボトルに付けられたのもこの時代。
灰皿や水差し、はたまたヌードカレンダーまで!(欲しい)
企業努力!
1990年代
Johnny Walker read label 90年代後期流通
評価(10段階):5-
ハリのある香りたち、精製アルコール、穀物酢、塗り立てのアスファルト、スイートコーン、乾燥したほうれん草パン、三温糖、薬のような苦味、舌に粉っぽさが残る
刺激のある香りたちですが、口に含むと印象はかなり緩く。
ソーダで割ると、なんだか昔懐かしいラムネのような甘さが引き立ちます。
特級表記が消え、輸入社、総代理店の表記がUDになった1990年代初期のボトル。
表ラベルのデザインは、紳士が小さくなり、上部のラベルが山なりになっていますね。
また、1990年代中頃からバーコードが使われ始めます。
80年代の不況を乗り越え、生産数量、消費量ともに回復していった1990年代。
アランやキニンヴィーなどの蒸留所が新設されたのもこの頃ですね。
ジョニーウォーカーも新しいラベルを3つ展開します。1992年、「オールデスト」を「ブルーラベル」に改名。95年に「ゴールドラベル」(現在ではプラチナ)、97年に「グリーンラベル」をリリース。
その1997年、ギネス社は、J&Bなどのブランドを保有する、「グランドメトロポリタングループ」と合併。
現在でもお馴染み「ディアジオ」が誕生します。
2020年代
Johnny Walker read label 2020年流通
評価(10段階):4-
刺激的な香りたち、消毒綿、合成木材、給食で食べたワカメのスープ、生の人参、鼻抜けに僅かに蒸しパンの甘味
紳士がついにシルエットになっていますね。
味わいはアルコール感が鼻につき、余韻に妙な不快感があります。
ただ、コンビニでも買えるこの一本、散歩のお供に瓶から直接きゅっと飲むのには最適です。チェイサーは濃いお茶などが味に締まりを持たせてくれるように思います。
裏面です。
2009年より麒麟麦酒と業務提携、輸入元が麒麟麦酒になっています。
2012年には新ラベル「ダブルブラック」を、現在では他にも「ワインカスク」や「トリプルグレーン」などの限定品も発売されていますね。
総括
本年、創業200年を迎えたジョニーウォーカーは、今でも世界で最も売れているスコッチウイスキーブランドとして皆様の側にあります。
正直な感想として、味や香りは50年近く前に流通していたボトルと比べると格段に劣ります。
シングルモルト需要が伸びたこともあり、良質な原酒がブレンデッドウイスキーに回されなくなったのは明らかです。
しかし、200年も前に、遠いキルマーノックの地の食料雑貨店から生まれたウイスキーが、今では全世界で飲まれていて、コンビニでだって手に入る。目覚ましいことだと思います。
また、2021年にガラス製容器から紙製容器へ変更されることが決まり、賛否を巻き起こしましたね。
紙製容器では長期保存は望めず、骨董品レベルのオールドボトルをちまちまと楽しんでいる私としては寂しく思います。
ただし、企業が環境保全を求められている昨今、全体がリサイクル可能な紙製容器への変更は生態系に配慮した決断で、一概に悪手とは言えません。
時代とともに変化する「ジョニー・ウォーカー」
私が老い、亡くなった先も、どんな形になっても、人々に愛され続けていて欲しいと願っています。
それでは、前後編とお付き合い頂きありがとうございました!
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